昔の私は、歌手になりたいと思っていた。
歌が好きだったし、人前で表現することも好きだった。
だから自然と、
「歌手になれたら幸せなんだろうな」
と思っていた。
でも最近、少し違うことに気づいた。
私は歌手になれなかったわけじゃない。
負けたわけでもない。
ただ、自分が本当に欲しかったものが違ったのだ。
歌手やバンドを見ていると、曲だけを売っているわけではない。
声も、見た目も、キャラクターも、世界観も、全部含めて一つの商品になっている。
もちろん、それは素晴らしいことだと思う。
でも私は、そこに少し違和感を覚えた。
歌を売りたいわけじゃない。
自分の外側だけで価値を証明したいわけじゃない。
そう気づいた。
有名になることについても同じだった。
昔は、有名になれば自由になれると思っていた。
でもよく考えると、有名になることは別の制約を引き受けることでもある。
近所の公園で気軽に歌えない。
一人で出歩きにくい。
常に誰かに見られる。
期待を背負う。
有名になれば自由になるのではなく、自由の種類が変わるだけなのかもしれない。
そして一度そこへ行くと、完全には元に戻れない。
それは悪いことではない。
ただ、私はその制約を本当に望んでいるのだろうか。
そう考えた時、答えは少し違った。
私は誰かの成功モデルを真似しなければいけないと思っていた。
歌手。
配信者。
インフルエンサー。
何かの肩書きを手に入れなければ価値がないと思っていた。
でも本当は違った。
自分で作ってもいいのだ。
地味でもいい。
有名じゃなくてもいい。
私は発見することが好きだ。
人を観察することが好きだ。
人生について考えることが好きだ。
そして、その発見を言葉にすることが好きだ。
だから今の私は、
「私の歌を聴いてほしい」
よりも、
「私の見つけた視点を見てほしい」
に近い。
歌は好きだ。
これからも歌うと思う。
でも歌は目的ではなく、表現手段の一つなのかもしれない。
私が本当に届けたいのは歌声ではなくて、思想だった。
誰かのレールの上を走るのではなく、
自分で道を作る。
派手ではないけれど、
今の私はその方がずっと自由だと思っている。