うちにはハムスターがいる。
正確には、
私の人生を観察している、
としか思えないハムスターがいる。
私は勝手に先生と呼んでいる。
本人(本ハム?)にその自覚はない。
—
ある日。
私は何となく落ち着かなかった。
やることはない。
締切もない。
急ぎの用事もない。
なのにソワソワする。
何かしなきゃ。
何か進めなきゃ。
何か生み出さなきゃ。
そんな感覚だけが残っていた。
—
ふと見ると、
ハムスターは寝ていた。
それはもう見事に寝ていた。
働く気配もない。
自己成長する気配もない。
未来を心配している様子もない。
ただ寝ている。
しかも気持ちよさそうに。
—
私は思った。
「いいなぁ。」
である。
—
人間は不思議だ。
疲れているのに休まない。
眠いのに起きている。
お腹が空いていないのに食べる。
お腹が空いているのに我慢する。
そして、
休んでいるのに罪悪感を感じる。
なかなか面倒な生き物だと思う。
—
一方ハムスター。
眠い。
寝る。
お腹空いた。
食べる。
走りたい。
走る。
以上。
説明終わり。
—
もちろん人間には責任もある。
仕事もある。
社会もある。
だから全部を真似することはできない。
でも、
ハムスターを見ていると、
ひとつだけ確かなことがある。
休むことは悪いことではない。
ということだ。
—
私は長い間、
休むためには理由が必要だと思っていた。
頑張ったから休む。
疲れたから休む。
体調が悪いから休む。
許可証が必要だった。
でもハムスターは違う。
眠いから寝る。
それだけだ。
—
もしかしたら私は、
休むことそのものより、
休むことを許すのが下手だったのかもしれない。
だからずっと、
「まだ頑張れる」
を続けてしまった。
—
最近は少しだけ変わった。
眠い日は寝る。
疲れた日は横になる。
何もしたくない日は、
何もしない。
まだ完璧にはできない。
途中でソワソワもする。
でも、
ハムスター先生を見ていると、
まあいいかと思える。
—
今日も先生は寝ている。
たぶん明日も寝ている。
そして私は、
その姿を見ながら、
人間の休み方を勉強している。