冷凍保存という発明。

最近、人生が少し楽になった。

その理由は、

冷凍保存を覚えたからだ。

もちろん食べ物の話ではない。

アイデアの話である。

昔の私は、

思いついたら今やらなければいけないと思っていた。

記事のネタを思いついた。

書かなきゃ。

企画を思いついた。

形にしなきゃ。

気づきを得た。

忘れる前にまとめなきゃ。

いつもそんな感じだった。

だから頭の中には、

常に「やらなきゃ」が積まれていた。

今思うと、

かなり忙しい脳みそだったと思う。

ある日気づいた。

別に今日やらなくてもいいのでは?

当たり前の話である。

でも私にとっては、

結構大きな発見だった。

思いついたことは、

その場で完成させなくてもいい。

メモしておけばいい。

保存しておけばいい。

未来の私が使えばいい。

それだけだった。

考えてみれば、

食材だってそうだ。

今日買った野菜を、

全部その日のうちに食べなければいけない人はいない。

冷蔵庫に入れる。

冷凍庫に入れる。

必要になったら使う。

それと同じだった。

なのに私は、

アイデアだけは全部今日使おうとしていた。

結果として、

毎日フルコースだった。

朝から晩まで、

思いつき定食。

発見ラーメン。

気づき丼。

自己理解セット。

お腹いっぱいである。

最近は違う。

面白いことを思いついた。

「冷凍しとこ。」

記事になりそう。

「冷凍しとこ。」

シリーズになりそう。

「冷凍しとこ。」

未来の私が使うかもしれない。

「冷凍しとこ。」

これだけで、

頭の中の圧迫感がかなり減った。

やらなきゃではなく、

置いておけばいいになった。

そして不思議なことに、

置いておいたネタは腐らなかった。

むしろ発酵した。

数週間後に見ると、

当時より深く理解できていることもあった。

だから今は、

思いついても焦らない。

未来の私を少し信頼している。

どうせまた掘り返す。

どうせまた考える。

どうせまた面白がる。

だから急がなくていい。

人生は意外と長い。

そして冷凍庫は思ったより大きい。

最近の私は、

アイデアを追いかけ回す人から、

アイデアを保存できる人になり始めている。

それだけで、

毎日が少し静かになった。